組織がクラウドインフラや分散型データ環境にますます依存する中で、機密情報の可視性とコントロールを維持することはこれまで以上に困難になっています。データセキュリティポスチャーマネジメント(DSPM)は、最も価値のある資産を保護し、厳格な規制要件を満たしたい組織にとって、重要な分野として浮上しています。本ガイドでは、DSPMとは何か、その重要性、そして組織が効果的なデータセキュリティポスチャーマネジメント戦略を導入して業務と評判を守る方法について詳しく解説します。

Data Security Posture Management (DSPM)

エグゼクティブサマリー

主なポイント:データセキュリティポスチャーマネジメント(DSPM)は、ハイブリッドおよびマルチクラウド環境全体でデータを発見・分類・継続的に監視し、適切なセキュリティコントロール、規制コンプライアンス、リスク低減を実現する包括的なアプローチです。

注目すべき理由:組織が被る平均的なデータ侵害コストは4.88百万ドルにのぼり、侵害の83%がクラウドに保存されたデータに関連しています。DSPMは、コストのかかる侵害を防ぎ、規制コンプライアンスを維持し、複雑化するデジタル環境下で顧客の信頼を守るために必要な可視性とコントロールを提供します。

主なポイント

  1. DSPMは複雑な環境全体で包括的なデータ可視化を実現

    DSPMソリューションは、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドインフラ全体のデータを自動的に発見・マッピングし、従来のセキュリティツールが見落としがちな盲点を排除します。

  2. 自動分類とリスク評価でセキュリティ運用を効率化

    機械学習アルゴリズムがデータの機密度を継続的に分類し、リスクを評価することで、セキュリティチームが保護活動の優先順位を効果的に決定できます。

  3. 継続的な監視で規制コンプライアンスが容易に

    DSPMプラットフォームは、GDPRHIPAA、SOXなどのフレームワークに対するコンプライアンス状況をリアルタイムで追跡し、監査の複雑さや規制違反を軽減します。

  4. 早期脅威検知でコストのかかるデータ侵害を防止

    データアクセスパターンを監視し異常を特定することで、DSPMは組織が深刻な侵害に発展する前に潜在的な脅威を検知するのに役立ちます。

  5. プロアクティブなリスク管理で事業継続性を向上

    堅牢なDSPM戦略を持つ組織は、インシデント対応の時間が50%短縮され、セキュリティイベント発生時のダウンタイムも大幅に削減されています。

データセキュリティポスチャーマネジメント(DSPM)とは?

データセキュリティポスチャーマネジメントは、組織がデータ保護に取り組む姿勢におけるパラダイムシフトを意味します。従来の境界防御に重点を置いたセキュリティ対策とは異なり、DSPMはデータ中心のアプローチを採用し、機密情報がどこに存在していても継続的に発見・分類・監視します。

DSPMの本質は、組織が自社のデータ状況を完全に可視化し、適切なセキュリティコントロールを確実に導入できるようにすることです。このアプローチは、多くの組織が直面する「どんなデータがどこに保存され、誰がアクセスでき、適切に保護されているかを把握する」という根本的な課題に対応します。

この手法は、自動化された発見プロセスと継続的な監視機能の両方を含み、ビジネス要件や新たな脅威の変化に適応する動的なセキュリティポスチャーを構築します。DSPMを導入することで、組織は受動的なセキュリティ対策からプロアクティブなリスク管理戦略へと転換できます。

DSPMの主要コンポーネント

DSPMの本質的な要素を理解することで、組織は包括的なデータ保護戦略を構築できます。これらのコンポーネントが連携し、全体的なデータセキュリティ管理アプローチを実現します。

データ発見とインベントリ

効果的なDSPMの基盤は、包括的なデータ発見機能にあります。最新のDSPMソリューションは、高度なスキャン技術を用いて、クラウドストレージ、データベース、ファイルシステム、SaaSアプリケーションなど多様な環境に存在する構造化・非構造化データを特定します。

この発見プロセスは単なるファイルの識別にとどまらず、データの内容を分析してコンテキストや機密度まで把握します。組織は、データの保存場所、種類、関連性を詳細に示すインベントリを取得し、保護戦略の意思決定に役立てることができます。

分類とラベリング

データが発見された後、分類エンジンが内容を分析し、機密度や規制要件を判定します。これらのシステムは、さまざまなデータタイプでトレーニングされた機械学習アルゴリズムを活用し、事前定義されたポリシーや規制フレームワークに基づいて情報を正確に分類します。

自動ラベリングにより、組織全体で一貫した分類が実現し、手作業の負担も軽減されます。このプロセスで標準化された分類体系が構築され、適切なセキュリティコントロールやアクセス制御ポリシーを一貫して適用できます。

リスク評価とスコアリング

DSPMプラットフォームは、アクセス権限、保存場所、暗号化状況、コンプライアンス要件などの要素を分析し、データの露出リスクを継続的に評価します。リスクスコアリングアルゴリズムにより、潜在的な影響や悪用の可能性に基づいて脆弱性の優先順位付けが行われます。

これらの評価により、セキュリティチームは重要なリスクにリソースを集中できる実用的な知見を得られます。動的なリスクスコアリングは状況変化に適応し、環境の進化に合わせて保護戦略の有効性を維持します。

ポリシー施行と監視

継続的な監視機能により、データアクセスパターン、権限変更、セキュリティコントロールの有効性が追跡されます。DSPMソリューションは、事前定義されたポリシーを自動的に施行し、違反や不審な活動があればアラートを発します。

この継続的な監督により、セキュリティ対策の有効性が長期的に維持され、組織は規制要件へのコンプライアンスも確保できます。リアルタイム監視により、新たな脅威や不正アクセスの試みへの迅速な対応が可能です。

DSPMがセキュリティとコンプライアンスを強化する仕組み

DSPMを導入した組織は、セキュリティポスチャーと規制コンプライアンスの両面で大きな改善を実感しています。これらのメリットは従来のセキュリティ対策を超え、包括的な保護戦略を構築します。

セキュリティポスチャーの強化

DSPMは、データの保存場所やアクセスパターンを完全に可視化することで、セキュリティの盲点を排除します。この包括的な視点により、セキュリティチームは脆弱なデータストアや設定ミス、見落とされがちな攻撃経路を特定できます。

DSPMの継続的監視機能により、環境の変化に応じてセキュリティコントロールの有効性が維持されます。組織は設定ドリフトや不正アクセス、ポリシー違反をリアルタイムで検知し、新たな脅威への迅速な対応が可能です。

規制コンプライアンスの自動化

現代のデータ保護規制では、組織に対して詳細な文書化や定期的な評価による継続的なコンプライアンス証明が求められます。DSPMプラットフォームは、データ取扱い状況を規制フレームワークに照らして継続的に監視し、コンプライアンス報告を自動化します。

この自動化により、コンプライアンスチームの負担が軽減され、監査人には保護措置の詳細な証拠が提供されます。組織は必要に応じてコンプライアンスレポートを作成し、是正措置の進捗を追跡し、データ保護におけるデューデリジェンスを証明できます。

インシデント対応の迅速化

セキュリティインシデント発生時、DSPMは迅速な対応を可能にする重要なコンテキストを提供します。セキュリティチームは、影響を受けたデータの特定や影響範囲の評価、正確なデータインベントリやリスク評価に基づく適切な封じ込め策の実施が短時間で行えます。

この可視性向上により、調査時間が短縮され、各種プライバシー規制に基づく通知要件の遵守も容易になります。詳細なデータ系譜情報はフォレンジック調査を支援し、同様のインシデント再発防止にも役立ちます。

顧客・エンドユーザーへのメリット

DSPMの導入は組織の枠を超え、顧客やエンドユーザー、さらには社会全体に対しても、データ保護とプライバシー強化によるポジティブな影響をもたらします。

プライバシー保護の強化

組織が個人データの取扱いをより適切に管理できるようになることで、顧客はプライバシー保護の向上という恩恵を受けます。DSPMにより、組織はプライバシー・バイ・デザインの原則を実践し、顧客データのライフサイクル全体で適切な保護を実現します。

この強化された保護は、組織が個人情報を安全に扱う能力への顧客の信頼と安心感を高めます。組織はデータ取扱いの透明性を高め、プライバシー保護へのコミットメントを示すことができます。

サービス信頼性の向上

データ侵害やセキュリティインシデントの防止により、DSPMはサービスの信頼性と可用性向上に貢献します。顧客はセキュリティイベントによるサービス中断が減少し、より良いユーザー体験を得られます。

DSPMのプロアクティブな特性により、組織は事業継続性を維持し、顧客が必要な時にサービスへアクセスできる環境を確保します。この信頼性は、顧客満足度やロイヤルティの向上につながります。

社会全体への広範なメリット

堅牢なDSPMを実践する組織は、個人情報の盗難や詐欺、その他の悪意ある活動に利用されうる機密データの保護を通じて、社会全体の安全なデジタル環境づくりに貢献します。この集団的なデータ保護アプローチが、より安全なデジタル社会の実現につながります。

DSPMは必要か:DSPMを怠るリスク

包括的なDSPM戦略を導入しない組織は、規制違反から評判低下まで、さまざまな側面で重大なリスクに直面します。

規制・法的リスク

データ保護規制では、違反時に年間全世界売上高の最大4%という多額の罰金が科される場合があります(GDPRなど)。適切なDSPMがなければ、コンプライアンスの証明が困難となり、規制制裁や法的トラブルにつながります。

進化する規制環境では、組織に詳細なデータ取扱い記録の維持が求められます。DSPMがなければ、監査要件への対応やデータ保護におけるデューデリジェンスの証明が困難となります。

財務的影響

データ侵害は、規制罰金を超える大きな財務的損失をもたらします。インシデント対応、法的費用、顧客通知、クレジット監視サービス、事業中断などのコストが発生し、データ侵害の平均コストは世界的に4.88百万ドルに達しています。

また、顧客やパートナーからの信頼喪失によるビジネス機会の損失も発生します。評判低下による長期的な財務的損失は、即時的な侵害対応コストを上回ることが多いです。

評判へのダメージ

データ侵害の公表は、組織の評判や顧客の信頼を深刻に損なう可能性があります。現代のネットワーク社会では、セキュリティインシデントのニュースがSNSや報道を通じて瞬時に拡散し、長期的な評判ダメージを引き起こす恐れがあります。

組織は評判低下からの回復に苦しみ、新規顧客獲得の減少、解約率の上昇、優秀な人材の確保難などに直面します。評判ダメージによる無形のコストは、初期インシデント後も長期間にわたり残ることがあります。

DSPM導入要件

DSPMを成功裏に導入するには、さまざまな組織要素を考慮した慎重な計画が必要です。これらの要件を理解することで、効果的な導入準備が可能となります。

技術インフラ

組織は、DSPMソリューションを支える堅牢な技術インフラ(十分なネットワーク帯域、ストレージ容量、処理能力など)が必要です。クラウドベースのDSPMプラットフォームでは、既存システムとの適切な連携のために特定のネットワーク構成やセキュリティコントロールが求められる場合があります。

既存のセキュリティツールやID管理システム、コンプライアンスプラットフォームとの連携機能も重要です。現状の技術スタックを評価し、必要なアップグレードや変更を計画しましょう。

組織の準備状況

DSPM導入の成功には、組織のコミットメントとチェンジマネジメントの支援が不可欠です。経営層がデータ保護の取り組みを主導し、導入や運用に必要なリソースを確保する必要があります。

スタッフ向けのトレーニングや意識向上プログラムは、DSPM実践の定着に役立ちます。内部専門性の育成や、データ保護活動における明確な役割・責任の設定に投資しましょう。

ポリシー・ガバナンスフレームワーク

組織は、DSPM導入を支える明確なデータガバナンスポリシーや手順を整備する必要があります。これらのフレームワークには、データ分類基準、アクセス制御、保存期間ポリシー、インシデント対応手順などが含まれます。

明確なガバナンス体制により、組織全体で一貫したDSPM運用が可能となります。定期的なポリシー見直しと更新で、ビジネス要件や規制動向の変化に対応しましょう。

DSPM導入のベストプラクティス

効果的なDSPMを実現するには、セキュリティ効果を最大化しつつ運用の複雑さを最小限に抑える実証済みの手法を遵守することが重要です。

1. 包括的なデータ発見から開始

DSPM導入は、レガシーシステム、クラウドプラットフォーム、SaaSアプリケーションを含む全環境での徹底的なデータ発見から始めましょう。この包括的アプローチにより、見落としのない保護戦略の基盤が構築されます。

構造化・非構造化データの両方を特定でき、業務への影響を最小限に抑える自動発見ツールを活用しましょう。定期的な発見スキャンで、環境の変化に応じた正確なデータインベントリを維持します。

2. リスクベースの分類を実施

ビジネス価値、規制要件、リスク露出度に基づくデータ分類スキームを策定し、技術的特徴だけでなく実際のリスクに基づいて保護活動の優先順位を決定しましょう。

データパターンの変化に適応し、精度を継続的に向上できる機械学習対応の分類ツールを活用します。定期的な分類見直しで、ビジネス要件の進化に対応しましょう。

3. 継続的な監視体制の構築

データアクセス、移動、セキュリティコントロールの有効性をリアルタイムで追跡する継続的な監視機能を導入しましょう。この継続的な可視性により、異常やポリシー違反の迅速な検知が可能となります。

セキュリティチームが過負荷にならないよう、実用的な通知を提供するアラートシステムを構成します。リスクレベルやビジネスへの影響度に応じてアラートの優先順位を決定しましょう。

4. 既存セキュリティツールとの統合

DSPMソリューションが、既存のセキュリティ情報イベント管理(SIEM)やID・アクセス管理(IAM)プラットフォーム、その他のセキュリティツールと効果的に統合されていることを確認しましょう。この統合により、一貫したセキュリティエコシステムが構築されます。

既存のセキュリティ技術への投資を活かしつつ、DSPM固有の機能で能力を強化します。セキュリティアーキテクチャの進化に合わせて、将来的な統合要件も計画しましょう。

5. 定期的な評価の実施

DSPMの有効性について、リスク評価、ポリシー見直し、コンプライアンス監査などの定期的な評価を実施しましょう。これらの評価により、改善点の特定やビジネス目標との整合性維持が可能となります。

評価結果を活用して、分類スキームの改良、ポリシーの更新、監視機能の強化を行いましょう。業界標準との定期的なベンチマークは、パフォーマンスの知見を提供します。

データセキュリティ戦略を変革する:DSPMで次のステップへ

データセキュリティポスチャーマネジメントは、現代のデジタル環境の複雑さに対応するためのプロアクティブかつデータ中心のセキュリティ戦略への根本的な転換を意味します。包括的な可視性、自動分類、継続的な監視機能を提供することで、DSPMは組織が最も価値のある資産を保護し、規制コンプライアンスと顧客の信頼を維持できるようにします。

DSPMのメリットは組織の枠を超え、顧客やエンドユーザー、社会全体に対してもプライバシー保護の強化やサービス信頼性の向上という形で波及します。DSPMを怠る組織は、規制・財務・評判面で重大なリスクに直面し、長期的な影響を受ける可能性があります。

DSPMを成功裏に導入するには、慎重な計画、組織的なコミットメント、実証済みベストプラクティスの遵守が不可欠です。技術インフラ、人材育成、ガバナンスフレームワークへの投資により、DSPMの効果を最大化しましょう。

データのモダナイゼーション・ガバナンス・コントロールの拡張:KiteworksがDSPMを補完する方法

データセキュリティポスチャーマネジメント(DSPM)プラットフォームは、機密データの発見・分類、シャドーデータの特定、過度な公開リスクの把握において重要な役割を果たします。しかし、データが実際に利用・移動される段階(メール、ファイル転送、API、コラボレーションなど)になると、組織はそのデータの可視性とコントロールを失いがちです。

そこでKiteworksの登場です。Kiteworksのプライベートデータネットワークは、DSPMによる上流の保護効果を、Microsoft Information Protection(MIP)ベースの制御によりサプライチェーンなど下流にも拡張します。具体的には以下の通りです:

Kiteworksプライベートデータネットワークの中核となるデータポリシーエンジンは、上流のDSPMソリューションからMicrosoft Information Protection(MIP)ラベルを取り込み、機密文書の共有・アクセス・利用方法について、組織外も含めて一貫性のある監査可能なガバナンスを実現します。これらのポリシーは、メール(KiteworksセキュアメールやOutlookメールのMicrosoft Office 365プラグイン経由)、Kiteworksセキュアなファイル共有SFTPセキュアMFT、APIベースの自動化にも適用されます。

Kiteworksを活用することで、企業は下流リスクを次のように低減できます:

  • MIPラベルの取り込み:Microsoft Purviewや統合API経由でDSPMツールがラベル付けした文書に対し、自動的にポリシーを適用します。
  • ロール・属性ベースアクセス制御:RBACABAC機能を活用し、MIP機密ラベルなどのデータ属性、ユーザー属性(役割・場所)、ユーザーの操作(編集・ダウンロード等)に基づき、「閲覧のみ」「SafeEDIT」「ブロック」「暗号化」「許可」などの実行時ポリシーを適用します。
  • 非保有型編集SafeEDIT次世代DRMで、ファイルのダウンロードなしに、社内外ユーザーがブラウザ上で安全に文書編集を行えます。
  • エンドツーエンド暗号化メール、ファイル共有、SFTP、API、フォーム全体で、軍用レベルの暗号化をデータ転送時・保存時に適用します。
  • 統合監査ログとレポート:SOCやコンプライアンスチームに、外部データ交換を含むすべてのアクセス・共有・転送イベントのリアルタイム可視性を持つ監査ログを提供します。
  • DLP強化:ICAP経由でDLPサーバーと連携し、DLPの応答をポリシー判断に活用してデータ移動の許可・ブロック、SafeEDITや閲覧専用モードへの制限を実現します。

最終的に、KiteworksはどのDSPMソリューションを使っていても、データ分類の下流強制レイヤーとして機能します。その結果、機密データはどこに移動しても保護され、DSPMやDLPへの投資価値が最大化されます。

詳細は、カスタムデモ ください。

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